⚠ ひっかけパターン:効果・結論の逆転(下級裁判所も違憲審査権を有する→有しないとした)
- ① どこが間違いか
- 違憲審査権を有するのは最高裁判所に限られるとした点が誤りであり、下級裁判所も違憲審査権を有する
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 日本国憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が日本国憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定しており、文言上は最高裁判所についてのみ定めているように見える。しかし、判例(最大判昭和25年2月1日)は、日本国憲法76条1項が下級裁判所を含む裁判所一般に司法権を認めていること、及び日本国憲法81条が最高裁判所を「終審」裁判所として位置付けていることから、下級裁判所も違憲審査権を有することを当然の前提としていると解している。したがって、下級裁判所も具体的な訴訟事件の裁判に付随して違憲審査を行うことができ、最高裁判所はその上訴を受けて最終的な判断を下す終審裁判所としての地位を有するにすぎない。
- ③ 正しい記述
- 裁判所が違憲審査権を有するのは最高裁判所に限られない。下級裁判所も、通常の司法権の行使に付随して、法律、命令、規則又は処分が日本国憲法に適合するかしないかを審査する権限(違憲審査権)を有する。もっとも、最高裁判所は違憲審査についての終審裁判所としての地位を有する。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 日本の違憲審査制は、抽象的に法令の違憲性のみを審査する「抽象的審査制」ではなく、具体的な訴訟事件の解決に必要な限度で日本国憲法適合性を判断する「付随的審査制」を採用している。この制度の下では、通常の司法権を行使する全ての裁判所(下級裁判所を含む)が、当該事件の解決に必要な範囲で違憲審査を行うことができるとされる。仮に違憲審査権を最高裁判所のみに限定すると、下級裁判所の段階で違憲の疑いのある法令をそのまま適用せざるを得なくなり、迅速な権利救済に支障を来すため、下級裁判所にも違憲審査権を認める必要があるとされている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【終審=最後の判断者であって唯一の判断者ではない】日本国憲法81条の「終審裁判所」という文言は、下級裁判所も違憲審査を行うことを前提に、その最終的な判断権が最高裁判所にあることを示しているにすぎないと整理する。対比として、条約の違憲審査については、統治行為論により「一見極めて明白に違憲無効」な場合に限り司法審査が及ぶとした砂川事件判決と混同しないよう注意する。
- ⑥ 本試験ではここも問われる(関連論点)
- 違憲審査の対象は法律・命令・規則・処分に限られ、条約については統治行為論により司法審査が制限される場合があるとした判例がある(砂川事件判決)。
- 違憲審査は具体的な訴訟事件を前提とする付随的審査制であり、抽象的に法令の違憲性のみを争って提訴することはできないとした判例がある(警察予備隊違憲訴訟判決)。
- 最高裁判所が法律を違憲と判断した場合でも、当該法律が当然に無効となり一般的に効力を失うわけではなく、当該事件についてその適用が排除されるにとどまるとする個別的効力説が通説である。
- 正しいルール
- 違憲審査権は最高裁判所に限られず、下級裁判所も通常の司法権の行使に付随して法律・命令・規則・処分の日本国憲法適合性を審査する権限を有し、最高裁判所はその終審裁判所としての地位を有するにすぎない
- 根拠条文
- 日本国憲法81条、日本国憲法76条1項
日本国憲法81条の条文を見るe-Gov法令API取得
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
日本国憲法76条の条文を見るe-Gov法令API取得
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
令和9年(2027年)4月1日施行の法令を参考にしています。