⚠ ひっかけパターン:効果・結論の逆転(留置権が成立する→成立しない)
- ① どこが間違いか
- 詐欺取消し後のAの代金返還請求権は甲建物の引渡義務と同一の法律関係(売買契約)から生じたものであり、甲建物との牽連関係が認められるため、Aは甲建物について留置権を行使することができる
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 民法295条1項は、他人の物に関して生じた債権を有する者がその弁済を受けるまで当該物を留置することができると定めている。判例(大判大正10年12月23日)は、「物に関して生じた債権」とは、物自体から直接生じた場合に限らず、その物の引渡義務と牽連関係(同一の法律関係・同一の生活関係)に立つ債権も含むと解している。本問では、Bの詐欺を理由に売買契約が取り消されると、AのBに対する代金返還請求権(不当利得返還請求権・民法121条の2)とBのAに対する甲建物引渡請求権は、いずれも同一の売買契約の巻き戻しとして生じるものであり、牽連関係が認められる。したがって、Aは甲建物について留置権を行使することができる。
- ③ 正しい記述
- AがBから甲建物を買い受けたが、Bの詐欺を理由にその売買契約を取り消した場合において、Aが支払済みの代金の返還をBに請求するときは、Aの代金返還請求権は甲建物の引渡義務と同一の法律関係から生じたものとして牽連関係が認められるから、Aは甲建物についての留置権を行使することができる。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 留置権は、公平の原則に基づく法定担保物権である。互いに対立する債権・債務が同一の法律関係から生じている場合に、一方だけが先に履行しなければならないとするのは衡平に反する。そこで、物の引渡義務と債権が同一の法律関係から生じている場合には牽連関係を認め、留置権の成立を肯定することで、当事者間の公平を確保する趣旨とされている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【牽連関係=「同じ関係から生まれた兄弟債権」】物から直接生じた債権だけでなく、物の引渡義務と「同一の法律関係」から生まれた債権にも留置権が認められる。売買が取り消されたケースでは、「代金返還請求権と建物引渡義務はもとは一つの売買契約から生まれた双子」とイメージすると牽連関係を認めやすい。問題文に「~に関して生じた債権ではないから留置権を行使できない」とあれば、牽連関係の有無を丁寧に検討するクセをつけよう。
- 正しいルール
- 留置権は、他人の物に関して生じた債権を有する者が、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができる権利であり、債権がその物自体から生じた場合だけでなく、その物の引渡義務と同一の法律関係から生じた場合にも牽連関係が認められる
- 根拠条文
- 民法295条1項
民法295条の条文を見るe-Gov法令API取得
(留置権の内容)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。