⚠ ひっかけパターン:効果・結論の逆転(求償できる→求償できない)
- ① どこが間違いか
- 使用者Aは被用者Bに対して求償することができないとしている点が誤りであり、民法715条3項は使用者の求償権を明文で認めている
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 民法715条3項は、「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」と定めており、使用者は被害者に損害賠償をした後、被用者に対して求償することができる。したがって、「求償することができない」とする本問の記述は誤りである。なお、判例(最高裁昭和51年7月8日判決等)は、使用者から被用者への求償は信義則上相当と認められる限度に制限されるとしているが、求償権自体が否定されるわけではない。
- ③ 正しい記述
- AがBの事業の執行についての不法行為によって損害を受けたCに対して損害を賠償した場合において、Aは、Bに対して求償することができる。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 使用者責任(民法715条1項)は、被用者の不法行為について使用者に無過失責任に近い形で賠償責任を負わせることで、被害者保護を図る制度である。しかし、損害を直接生じさせた行為者は被用者であるから、使用者が被害者への賠償を行った後に、被用者に対してその負担を求めることを認めるのが公平の観点から妥当である。そこで、民法715条3項は求償権を明文で保障している。もっとも、現実には被用者が使用者の指揮監督下で行った行為であることが多く、被用者のみに全額負担させると酷な場合があることから、判例は信義則による求償範囲の制限を認めている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【使用者責任=弁償できる、かつ、求償もできる】民法715条の構造を「1項:使用者が被害者に払う義務」「3項:使用者が被用者に求償できる権利」と項番で整理する。『求償できない』という選択肢は反射的に疑うこと。『できない』『しなければならない』といった強い否定・義務の表現は逆転ひっかけの定番パターン。
- 正しいルール
- 使用者が被害者に損害賠償をしたときは、使用者は被用者に対して求償することができるが、求償の範囲は信義則上相当と認められる限度に制限されるのが判例の立場であり、条文上も求償権自体は認められている
- 根拠条文
- 民法715条3項
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(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。