⚠ ひっかけパターン:除外規定・例外の無視(相殺の抗弁に関する既判力の例外を無視して「理由中の判断には一切既判力が生じない」と断言する)
- ① どこが間違いか
- 「いかなる場合においても」既判力が生じないとしている点が誤り。相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断については、例外として既判力が生じる
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 民事訴訟法114条1項は、確定判決の既判力は「主文に包含するもの」に限り生じると定めており、原則として理由中の判断に既判力は生じない。しかし、民事訴訟法114条2項は、相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断については既判力が生じると定めている。相殺の抗弁は、被告が反対債権を有することを主張して訴求債権と対当額で消滅させる旨の攻撃防御方法であり、その成否の判断は実質的に反対債権についての別訴に相当する重大な判断であるため、例外的に既判力が認められている。したがって、「いかなる場合においても」理由中の判断に既判力が生じないとする本問の記述は誤りである。
- ③ 正しい記述
- 確定判決の既判力は判決の主文に包含するものに限り生じ、理由中の判断には原則として既判力は生じない。ただし、相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断については、例外として既判力が生じる。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 理由中の判断に原則として既判力が生じないとされているのは、当事者は主文における権利関係の確定を目的として訴訟を追行するのであり、附随的な理由中の判断にまで既判力を及ぼすと当事者の応訴負担が過大になるためである。一方、相殺の抗弁については、被告が積極的に反対債権の存在を主張してその消滅を求めるものであり、その判断は反対債権の存在・不存在という独立した実体的権利関係に及ぶ。このような反対債権について後に改めて別訴で争うことを許すと紛争の蒸し返しとなり、訴訟経済・法的安定性を害するため、例外的に既判力を認める趣旨から民事訴訟法114条2項が定められている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【既判力の原則と例外を「主文+相殺」で覚える】既判力が生じる範囲=①主文に包含するもの(原則・民事訴訟法114条1項)+②相殺のために主張した請求の成否(例外・民事訴訟法114条2項)。「主文と相殺の2つだけ」と語呂で覚え、「理由中の判断は原則NG、でも相殺はOK」と対比して整理すると間違えにくい。試験では「いかなる場合も」「一切」という全否定の文言が出たら例外の存在を疑うクセをつけよう。
- 正しいルール
- 確定判決の既判力は判決主文に包含するものに限り生じ、理由中の判断には生じない。ただし、相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断には既判力が生じる
- 根拠条文
- 民事訴訟法114条1項、民事訴訟法114条2項
民事訴訟法114条の条文を見るe-Gov法令API取得
(既判力の範囲)
確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
2 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。