⚠ ひっかけパターン:効果・結論の逆転(取戻しできない→取戻しできる)
- ① どこが間違いか
- 被供託者が供託を受諾する旨の意思表示をした後は、供託者は供託物を取り戻すことができないにもかかわらず、本問は「取り戻すことができる」としている点が誤りである
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 民法496条1項は、弁済者(供託者)は、供託を受けた者(被供託者)が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、その供託物を取り戻すことができると定めている。この規定を反対から読むと、被供託者が供託を受諾する旨の意思表示をした場合には、供託者の取戻請求権は消滅し、以後、供託者は供託物を取り戻すことができなくなる。本問では、Bが既に供託を受諾する旨の意思表示をしているため、Aは供託物を取り戻すことができない。
- ③ 正しい記述
- Aが、Bに対する売買代金債務について弁済供託をした場合において、Bが当該供託を受諾する旨の意思表示をしたときは、Aは、供託物を取り戻すことができない。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 弁済供託は、債権者が受領を拒否又は受領不能である場合等に、債務者を債務から解放するための制度である。供託がされた時点では、被供託者がまだ供託を受け入れるかどうか未定であるため、供託者にはやり直しの余地(取戻し)を認めるのが公平である。しかし、被供託者が供託を受諾する意思表示をした後は、被供託者において当該供託金を受け取る権利が確定的に発生したと評価できるため、供託者の一方的な都合による取戻しを認めると被供託者の地位が不安定になる。そこで、受諾後は取戻請求権を消滅させることで、被供託者の受給権を保護している。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【受諾したらもう戻せない】供託を受諾(=受け取る意思表示)された時点で、供託物は被供託者のものと確定すると考えると分かりやすい。「受諾=ロック(施錠)」とイメージし、受諾前は取戻し自由、受諾後は取戻し不可、と対比して覚える。
- 正しいルール
- 弁済供託において、被供託者が供託を受諾する旨の意思表示をした場合、供託者は供託物を取り戻すことができなくなる
- 根拠条文
- 民法496条1項
民法496条の条文を見るe-Gov法令API取得
(供託物の取戻し)
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
2 前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。