⚠ ひっかけパターン:決議要件の混同(普通決議→特別決議)
- ① どこが間違いか
- 取締役の報酬等の額を定めるための株主総会の決議は特別決議ではなく普通決議で足りる
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 会社法361条1項は、取締役の報酬等は定款にその額(または算定方法)を定めていないときは株主総会の決議によって定めなければならないと規定しているが、この決議についての特別の定めはなく、会社法309条1項が適用される普通決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う)で足りる。会社法309条2項は特別決議を要する事項を列挙しているが、取締役の報酬等の決定はその中に含まれていない。
- ③ 正しい記述
- 取締役会設置会社において、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益の額の決定を取締役会に委任する旨を定款に定めていない場合、当該利益の額を定めるには、株主総会の普通決議によれば足りる。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 取締役の報酬等は株主総会で決定することにより、取締役が自ら報酬を恣意的に決定すること(いわゆるお手盛り防止)を防ぐ趣旨で株主総会の関与が求められている。しかし、決議要件を特別決議(3分の2以上)まで引き上げると機動的な報酬設計が困難になること、また経営に与える影響が定款変更や組織再編ほど重大ではないことから、普通決議で足りるとされている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【報酬はお手盛り防止=株主総会だが普通決議】取締役の報酬決定は「株主総会で決める(お手盛り防止)」という点が試験で問われやすいが、決議の種類は「特別ではなく普通」と意識する。特別決議(3分の2)が必要なのは定款変更・解散・合併承認・特定の株主からの自己株式取得などの『重大事項』と整理すると混同しにくい。
- 正しいルール
- 取締役の報酬等は、定款に定めがない場合は株主総会の決議によって定めなければならず、この決議は普通決議で足りる
- 根拠条文
- 会社法361条1項
会社法361条の条文を見るe-Gov法令API取得
(取締役の報酬等)
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
2 監査等委員会設置会社においては、前項各号に掲げる事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
3 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、第一項の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の協議によって定める。
4 第一項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。
5 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
6 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
7 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二 監査等委員会設置会社
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。