⚠ ひっかけパターン:添付情報の要否の逆転(募集設立の要件である保管証明書を発起設立にも要求した)
- ① どこが間違いか
- 発起設立の場合、払込みの取扱いをした金融機関の保管証明書の提供は不要であり、発起人が作成した書面に通帳の写し等を合てつした「払込みがあったことを証する書面」を提供すれば足りる
- ② なぜ間違いか(根拠)
- 会社法64条1項は、募集設立の場合に発起人が払込みの取扱いをした銀行等に対して保管証明書の交付を請求することができる旨を定めているが、この規定は発起設立には適用されない。発起設立の場合は、商業登記法47条2項5号の「払込みがあったことを証する書面」として、発起人が作成した払込金額を証明する書面に、払込みを受けた口座の預金通帳の写し等を合てつしたもので足りるとされている(実務上確立した取扱い)。本問はA・Bのみで設立する発起設立の事例であるから、保管証明書の提供までは要しない。
- ③ 正しい記述
- AがBと共同して発起設立の方法により甲株式会社を設立する場合において、設立の登記を申請するときは、払込みがあったことを証する書面(発起人が作成した書面に払込みを受けた金銭の額を証する書面を合てつしたもの)を添付情報として提供すれば足り、払込みの取扱いをした銀行その他の金融機関が作成した保管証明書を提供することを要しない。
- ④ なぜそのルール?(立法趣旨)
- 発起設立は発起人自身が全株式を引き受けて出資するため、発起人間の閉鎖的な関係の中で払込みの事実が比較的容易に確認できる。これに対し募集設立は不特定多数の者から出資を募るため、払込みの確実性を金融機関の証明によって担保する必要性が高い。この出資者の範囲・利害関係人の多さの違いから、募集設立にのみ金融機関による厳格な保管証明が要求されている。
- ⑤ 覚え方・記憶のコツ
- 【発起は通帳、募集は証明書】発起設立=発起人だけの内輪の設立=「通帳の写し」で足りる、募集設立=広く出資者を募る=金融機関の「保管証明書」が必要、と対比して覚える。混同しやすいのは新株予約権の行使による払込み(会社法281条)で、こちらも保管証明書は不要で払込みがあったことを証する書面で足りる点と共通するイメージを持つとよい。
- ⑥ 本試験ではここも問われる(関連論点)
- 募集設立の場合には、会社法64条1項に基づき払込取扱機関が作成した保管証明書の提供を要する。
- 設立の登記の申請には、定款、発起人全員の同意書、設立時取締役の就任承諾書、印鑑証明書等の添付を要する。
- 現物出資財産等の価額が定款に定めた額を超えないことを証する書面等により検査役の調査を省略できる場合がある(会社法33条10項)。
- 正しいルール
- 発起設立の場合は払込みがあったことを証する書面(発起人が作成した書面に通帳の写し等を合てつしたもの)で足り、払込取扱機関の保管証明書は募集設立の場合にのみ必要となる
- 根拠条文
- 商業登記法47条2項5号、会社法34条1項、会社法64条1項
商業登記法47条の条文を見るe-Gov法令API取得
(設立の登記)
設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によつてする。
2 設立の登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、次の書面を添付しなければならない。
一 定款
二 会社法第五十七条第一項の募集をしたときは、同法第五十八条第一項に規定する設立時募集株式の引受けの申込み又は同法第六十一条の契約を証する書面
三 定款に会社法第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、次に掲げる書面
四 検査役の報告に関する裁判があつたときは、その謄本
五 会社法第三十四条第一項の規定による払込みがあつたことを証する書面(同法第五十七条第一項の募集をした場合にあつては、同法第六十四条第一項の金銭の保管に関する証明書)
六 株主名簿管理人を置いたときは、その者との契約を証する書面
七 設立時取締役が設立時代表取締役を選定したときは、これに関する書面
八 設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社であるときは、設立時執行役の選任並びに設立時委員及び設立時代表執行役の選定に関する書面
九 創立総会及び種類創立総会の議事録
十 会社法の規定により選任され又は選定された設立時取締役、設立時監査役及び設立時代表取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあつては設立時監査等委員である設立時取締役及びそれ以外の設立時取締役並びに設立時代表取締役、設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあつては設立時取締役、設立時委員、設立時執行役及び設立時代表執行役)が就任を承諾したことを証する書面
十一 設立時会計参与又は設立時会計監査人を選任したときは、次に掲げる書面
十二 会社法第三百七十三条第一項の規定による特別取締役(同項に規定する特別取締役をいう。以下同じ。)による議決の定めがあるときは、特別取締役の選定及びその選定された者が就任を承諾したことを証する書面
3 登記すべき事項につき発起人全員の同意又はある発起人の一致を要するときは、前項の登記の申請書にその同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならない。
4 会社法第八十二条第一項(同法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定により創立総会又は種類創立総会の決議があつたものとみなされる場合には、第二項の登記の申請書に、同項第九号の議事録に代えて、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
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(出資の履行)
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
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(払込金の保管証明)
第五十七条第一項の募集をした場合には、発起人は、第三十四条第一項及び前条第一項の規定による払込みの取扱いをした銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる。
2 前項の証明書を交付した銀行等は、当該証明書の記載が事実と異なること又は第三十四条第一項若しくは前条第一項の規定により払い込まれた金銭の返還に関する制限があることをもって成立後の株式会社に対抗することができない。
登記申請例を見る(記述対策)
| 登記の事由 | 株式会社設立の登記 |
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| 登記すべき事項 | 令和〇年〇月〇日発起設立の手続終了 |
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| 申請人 | 甲株式会社(設立時代表取締役A) |
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| 添付書面 | 定款 1通 発起人の同意書 1通 設立時取締役の就任承諾書 1通 設立時代表取締役の就任承諾書 1通 印鑑証明書 1通 払込みがあったことを証する書面 1通 委任状 1通 |
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| 登録免許税額 | 資本金の額の1000分の7(これによって計算した額が15万円に満たないときは15万円) |
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| 特記事項 | 発起設立のため払込取扱機関の保管証明書の提供は不要である |
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令和9年(2027年)4月1日施行の法令を参考にしています。