⚠ ひっかけパターン:効果・結論の逆転
🔍 建物譲渡と賃貸人たる地位の移転
旧所有者A
賃借人B
新所有者C
✅ 結論:対抗要件ある賃借人なら敷金債務も新所有者に承継される
⚠=ひっかけポイント(試験で狙われる箇所)
- ① どこが間違いか
- 「敷金の返還債務はCに承継されず、Aが依然として当該敷金返還債務を負う」という部分が誤り。この「承継されず」が試験のひっかけワード
- ② なぜ間違いか
- 民法605条の2第4項により、賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、敷金の返還債務も新賃貸人(譲受人)に承継される。これは、賃借人保護の観点から、賃貸借契約に付随する敷金関係も賃貸人たる地位の移転に伴って一体として移転させる趣旨である。ただし、旧賃貸人に対して生じた未払賃料等があれば、その分は敷金から当然に充当され、残額についてのみ新賃貸人に承継される。
- ③ 正しい記述
- 敷金の返還債務は、旧賃貸人Aに未払賃料等があればその額を控除した残額について、新賃貸人Cに承継される。
⚖ 対比で覚える:賃貸人たる地位の移転の有無による敷金の扱い
| 対抗要件を備えた賃借人がいる場合 | 対抗要件を備えていない賃借人の場合 |
| 賃貸人たる地位 | 譲受人に当然に移転する | 当然には移転しない |
| 敷金返還債務 | 譲受人に承継される | 旧所有者に残る |
| 承継の範囲 | 未払賃料等控除後の残額 | 問題とならない |
💡 なぜそのルールがあるのか賃借人が不動産の譲渡という自らの関与しない事情によって敷金返還請求権を失う不利益を被らないようにするため、賃貸人たる地位の移転に伴い敷金関係も新所有者に承継させることで賃借人の地位を保護する趣旨である。
📌 覚え方のコツ「地位が動けば敷金も一緒に動く」と覚える。賃貸人たる地位が新所有者に移転するなら、それに付随する敷金の債務だけ旧所有者に置いていくのは賃借人にとって不利益なので、セットで承継されると理解する。
🎯 試験での問われ方この論点は「敷金は旧賃貸人が負担したまま」のように敷金の承継を否定する形で出題されやすい。また、未払賃料等がある場合の充当関係(控除後の残額のみ承継)も併せて問われやすい。
- 正しいルール
- 対抗要件を備えた不動産賃借人がいる場合、その不動産が譲渡されると、賃貸人たる地位は原則として新所有者(譲受人)に当然に移転し、旧賃貸人が交付を受けていた敷金の返還債務も新所有者に承継される
- 根拠条文
- 民法605条の2第1項、民法605条の2第4項
民法605条の2の条文を見るe-Gov法令API取得
(不動産の賃貸人たる地位の移転)
前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
令和8年(2026年)4月1日施行の法令を参考にしています。