(根抵当権の元本の確定事由)
第398条の20 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第372条において準用する第304条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。
令和6年5月24日 施行
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/20240524_506AC0000000033
↓AIによる解説(内容は間違いがある可能性があります)Claude sonnet4.6作成
📚 対象試験:宅建行政書士司法書士
📖 根拠条文:民法 第398条の6・398条の8~10・398条の19・398条の20(令和8年4月1日施行版)
▍根抵当権の元本確定とは?
根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保する抵当権です(民法398条の2)。
元本確定前は被担保債権が入れ替わり続けますが、一定の事由が生じると元本が確定し、それ以降に発生する新たな債権はその根抵当権では担保されなくなります。
元本が確定すると、根抵当権に付従性・随伴性が生じ、通常の(普通)抵当権と同様の性質になります。
▍元本確定事由の全体像
| 根拠 | 確定事由 | 確定時期 | 宅建 | 行書 | 書士 |
|---|---|---|---|---|---|
| 398条の6 | 元本確定期日の到来 | 期日到来時 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 398条の8 | 根抵当権者・債務者の死亡後、6か月以内に合意登記なし | 相続開始時(みなし) | △ | ◎ | ◎ |
| 398条の9・10 | 合併・会社分割後、設定者が確定請求 | 請求時 | △ | ○ | ◎ |
| 398条の19① | 設定者からの確定請求(設定から3年経過後) | 請求から2週間後 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 398条の19② | 根抵当権者からの確定請求(いつでも) | 請求時に即時 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 398条の20①1号 | 根抵当権者自身が競売等を申立て・手続開始 | 手続開始時 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 398条の20①2号 | 根抵当権者が滞納処分による差押え | 差押え時 | △ | ○ | ◎ |
| 398条の20①3号 | 第三者の競売開始・差押えを根抵当権者が知った時から2週間経過 | 知った時から2週間経過後 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 398条の20①4号 | 債務者・設定者が破産手続開始決定 | 決定時 | ◎ | ◎ | ◎ |
◎=頻出 ○=出題あり △=やや低頻度
① 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
- 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は物上代位による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
- 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
- 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき。
- 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
② 前項第3号・第4号の効力が消滅したときは、担保すべき元本は確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。
① 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する。
② 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
③ 前2項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがある場合には、適用しない。
| 請求者 | 請求できる時期 | 確定時期 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 設定者 | 設定から3年経過後 | 請求から2週間経過後 | 設定者が複数の場合は全員からの請求が必要 |
| 根抵当権者 | いつでも | 請求時に即時確定 | 共同根抵当権の場合、全目的不動産の設定者全員に請求が必要 |
設定者(=物上保証人等)が不利な立場に置かれないよう、3年経過後に請求できる権利が与えられています。
ただし、根抵当権者に準備期間を与えるため、確定は請求から2週間後です。
一方、根抵当権者はいつでも請求でき、確定は即時(請求した時)です。
① 元本確定期日(398条の6)
根抵当権設定契約において元本確定期日を定めることができます。定めた期日が到来すれば自動的に確定します。
・確定期日は設定の時から5年以内で定めなければなりません(期日の定め・変更共通)。
・確定期日を定めた場合、設定者・根抵当権者からの確定請求(398条の19)は適用されない。
② 根抵当権者・債務者の相続(398条の8)
根抵当権者または債務者が死亡した場合、原則として元本が確定しますが、継続のための手続きがあります。
相続開始後6か月以内に指定根抵当権者(または指定債務者)の合意の登記がなされない場合、相続開始の時に元本が確定したものとみなされます。
③ 合併・会社分割(398条の9・398条の10)
根抵当権者または債務者について合併・会社分割があった場合、設定者は根抵当権設定時から3年を経過していなくても元本確定請求ができます(合併等後2か月以内)。
▍試験別 重要ポイント
宅建での出題ポイント
宅建では根抵当権の基礎的な仕組みと元本確定の主要事由が問われます。複雑な場合分けよりも「普通抵当権との違い」が中心です。
- 元本確定前は付従性・随伴性がない(被担保債権が全額弁済されても根抵当権は消滅しない)
- 設定者は設定から3年経過後に確定請求ができ、2週間後に確定
- 根抵当権者はいつでも確定請求でき、即時に確定
- 第三者の競売開始等を知った時から2週間経過で確定(398条の20①3号)
- 債務者・設定者の破産手続開始決定で確定(398条の20①4号)
行政書士での出題ポイント
宅建の範囲に加え、各事由の要件の細部や比較が問われます。
- 1号と3号の区別:根抵当権者自身の申立て(1号)vs 第三者の競売開始を知った2週間後(3号)
- 1号のただし書き:申立てだけでは足りず、手続の開始・差押えの効力発生が必要
- 398条の20②:3号・4号の効力が消滅したときは確定しなかったものとみなす(1号・2号は対象外)
- 設定者複数の場合、設定者全員からの確定請求が必要(398条の19①)
- 相続後6か月以内の合意登記がないと相続開始時に元本確定(398条の8)
司法書士での出題ポイント
司法書士では登記実務との関連も含め、細部の要件・例外・共有根抵当権等の特殊ケースまで問われます。
- 元本確定登記の要否:登記なしに確定の効果が生じる事由(1号・2号・期日到来・相続合意登記なし)と元本確定登記が必要な事由(3号・4号(法人)・確定請求)
- 設定者が自然人で破産の場合:不動産登記に破産の旨が記録されるため元本確定登記不要。法人の場合は商業登記には記録されるが不動産登記には記録されないため元本確定登記が必要。
- 共有根抵当権:原則として全員について確定事由が生じなければ確定しない。例外として①共有者の1人が競売手続を開始させた場合は確定する。
- 共用根抵当権(債務者複数):債務者の1人が破産しても確定しない。設定者が複数のとき1人の破産で確定する。
- 共同根抵当権:1つの不動産で確定事由が生じれば全不動産について元本が確定する(398条の17②)。
- 費用不足による破産廃止(異時廃止)後の確定の効力:法務局によって解釈が分かれているため管轄法務局への確認が必要。
▍関連判例
【論点】同順位の根抵当権者(共有根抵当権)の1人が不動産競売事件の申立書において「極度額の範囲内で担保権を実行する」旨を明示しなかった場合に、被担保債権の一部についての担保権の実行とみなせるかどうか。
【裁判所の判断】申立書の記載が民事執行規則170条4号の「被担保債権の一部について担保権の実行をする旨及びその範囲を示す記載」に当たらないとして、共有根抵当権者の1人による競売申立は元本確定の効果を生じさせることを確認した。
【試験上のポイント】根抵当権が共有の場合、共有者の1人が競売手続を開始させることで元本が確定する(原則「全員について事由が必要」の例外)。
【問題】債務者が破産手続開始決定を受けたことで元本が確定した後、費用不足を理由に破産廃止(異時廃止)となった場合、元本確定の効力は消滅するか。
【取扱い】「確定しなかったものとみなす」(2項本文)の「破産手続開始決定の効力が消滅したとき」が遡及的消滅を指すか、異時廃止も含むかについて、法務局によって解釈が異なる。栃木地方法務局大田原支局(平成24年9月)は「覆滅しない(確定のまま)」とし、東京法務局(平成23年5月)は「該当する」とした。
⚠️ 司法書士試験・実務では、管轄法務局への事前確認を要する論点として押さえる。
▍一問一答チェック(全8問)
❌ 確定しない。398条の20第1項1号のただし書きにより、競売手続の開始が現実になかった場合は元本は確定しない。申立てだけでは足りず、実際に競売手続が開始されることが必要である。
✅ 確定する。398条の20第1項3号は、第三者による競売手続の開始を「知った時から2週間経過」後に確定するとしている。ただし2週間以内に競売手続・差押えの効力が消滅した場合は確定しなかったものとみなされる(2項)。
✅ 確定する。398条の20第1項4号により、債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき元本は確定する。なお根抵当権者が破産してもこの号は適用されない。
❌ できない。398条の19第1項により、設定者が元本確定請求をできるのは「根抵当権の設定の時から3年を経過したとき」以降である。2年では要件を満たさない。
✅ 請求した時(即時)。398条の19第2項により、根抵当権者の確定請求は「その請求の時」に確定する。設定者からの請求(2週間後に確定)と区別して覚えること。
✅ 相続開始の時。398条の8第2項により、根抵当権者の相続開始後6か月以内に指定根抵当権者の合意登記がなされなかった場合、相続開始の時に元本が確定したものとみなされる。
❌ 確定しない。共用根抵当権(債務者が複数)の場合、債務者全員について確定事由が生じなければ根抵当権は確定しない。Aのみの破産では確定しない。(設定者が複数の場合は1人の破産で確定する点と混同しないこと)
✅ 確定しなかったものとみなされる(原則)。398条の20第2項本文により、3号の競売手続の効力が消滅したときは、担保すべき元本は確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権等を取得した者がいる場合はこの限りでない(2項ただし書)。
・民法(明治29年法律第89号)令和8年4月1日施行版 第398条の6, 398条の8~10, 398条の19, 398条の20
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089?occasion_date=20260401(e-Gov法令検索)
・最高裁判所 裁判例検索:https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html
・平成16年5月27日 最高裁第二小法廷 判決(平成15年(受)第1090号):裁判所ウェブサイト

